第一回 受け継いだ果樹と景観を残す

鳥取県東部八頭郡八頭町は、柿の名産地です。

特に幻の甘柿といわれる花御所柿(はなごしょがき)の産地として知られています。

そしてこの柿畑の風景は、日本風景街道に「新因幡ライン」という名称で登録されています。

この特集では、春夏秋冬の年4回に分けて、柿農家の仕事を体験させていただき八頭町にある柿畑の風景、

そして柿農家の思いについてお伝えします。

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大きな木で盆栽をやっている気持ち

この度取材させていただく岡崎ファームさんは、明治時代から続く柿農家の4代目です。園主である岡崎昭都さんは、祖父の柿を真剣に育てる姿を見て、100年以上になる果樹園を受け継ぎました。現在は、八頭町発祥の”花御所柿”をはじめ、糖度の高い甘柿や渋柿を1年かけて丁寧に育てています。

この日に手伝わせていただいた主な仕事は、柿の幼木(主に輝太郎)に防虫剤を塗る作業です。岡崎さんの果樹園には、場所ごとに何十本、何百本もの幼木があり、その一本一本に虫が入らないように防虫剤を塗っていきました。また、幼木の周りのモグラの穴をふさぐ作業も同時に行いました。モグラの穴からネズミが入り、柿の木の根っこを食べてしまうことを防ぐためです。

岡崎さんは、何年も先に柿が収穫できることを見越して、柿の木を切り、幼木を植えることを繰り返されています。まだ頼りない赤ちゃんの果樹が、たわわに果実を付けるのは、いつ頃になるのでしょうか?モグラの穴をふさぎ、枝の分岐部分に防腐剤を塗りながら、柿農家の醍醐味を教えていただきました。

「柿の木は、毎年育っていきます。そこが野菜やお米とは、違う点です。前年細かった木がだんだんと太くパワーアップしていくのを感じるのが、とても楽しい。剪定もどんなふうに伸ばすか、実を付けさせようかを考えて行う、大きな木で盆栽をやっているかのような気持ちになります。大きくて頼り替えのある柿の木に育っていく様が、すごくうれしいです。」

自然相手に勝てないけれど、対策はできる

その後、翌日行う予定である果樹の水やりのため、貯水池の掃除を行いました。岡崎ファームの果樹園は、基本一人で作業を行うため、スプリンクラーなどの設備を整えられています。柿畑が今年霜の被害を受けてしまったことを、悔しそうに話してくれました。

「自然相手に勝てないけれど、対策はできます。あの時、あれをしといたらよかったなって思うことばかりです。毎日が試行錯誤、でも試行錯誤している時間も楽しく感じます。」

岡崎さんは、軽トラックで先祖代々受け継ぐ柿畑に案内してくださいました。この山の麓にある少し斜面になっている果樹園には、樹齢100年を超える花御所柿の古木の大木が生育しています。太い幹に太い枝。枝の重さに耐え切れなくなり、幹が裂けて空洞ができています。秋には、凝縮された花御所柿をたくさん実らせるこの大木は、先祖代々受け継がれてきたものです。

樹齢100年以上の花御所柿そのバトンリレーを受け継ぐ岡崎ファームには、菜の花や蓮華の花が綺麗に咲いていました。車通りの多い国道29号線沿いにがあることから、自分の果樹園を見て綺麗に感じて欲しいと言われていました。

「綺麗な景観や柿の木を次の世代になるだけ残したいです。自分が柿の木を受け継いだように、景観も残したい。さっき試行錯誤のことを言っていたけど、どうやったら自分が楽しくできるかも試行錯誤でやっています。この場所に蓮華畑があったら、国道を車で走っている人から菜の花が見えたら、きっと嬉しいだろうなって。自分で作業をしていても、自分の植えた蓮華の花を見たら嬉しくなるし、道行く人にもこの果樹園を見て喜んでくれたら嬉しいです。自分が蓮華を植えているのを見て、近所の畑も同じように蓮華を植えてくれていました。自分がやっていて楽しいことが、どんどん広がっていくのを見るとやってよかったなって思えてきます。

光沢のある葉が特徴的な御所柿の緑葉

花御所柿の葉は冬にすべて落葉する

いいものを作って八頭町のことを届けたい

国道から見える蓮華畑

国道から見える果樹園であることは、やっぱり意識してしまいます。また、見られていると言えば柿農家の中では、若い自分がこの八頭町でしっかり生活をしていることで、自分もやってみたいと思ってくれる人が出てくるかもしれない。いいものを作って、八頭町をPRしたい。いいものさえ作れば、遠く離れた場所まで、この町のことが届くので。

高齢化が進み、果樹園を手放す農家が増えていくので、自分はなるだけいいものを作り、果樹園と景観を引き継ぎ、次の世代に残したいです。」

等間隔に並ぶ幼木と蓮華の風景

そんな風に語っていただいた、岡崎さん。今回作業をお手伝いさせていただく中でお話を聞き、果樹のことだけでなく八頭町の景観についても、関心をお持ちであることを知りました。そして、自分の役割について責任感を持たれており、お話を聞きながら背筋が伸びる思いでした。

岡崎ファームが面している国道29号線は、手つかずの日本の原風景が残りライダーのツーリングコースとしても愛されています。八頭町にお越しの際は、こういった景観も楽しんでいただければ嬉しいです。

次回は、夏に八頭町の柿畑の風景と柿農家のお仕事について、お伝えさせていただきます。お楽しみに!

 

<つづく>