第二回 柿農家の見据える先

鳥取県東部八頭郡八頭町は、柿の名産地です。

特に幻の甘柿といわれる花御所柿(はなごしょがき)の産地として知られています。

そしてこの柿畑の風景は、日本風景街道に「新因幡ライン」という名称で登録されています。

この特集では春夏秋冬の年4回に分けて、柿農家の仕事を体験させていただき八頭町にある柿畑の風景、

そして柿農家の思いについてお伝えします。

取材協力岡崎ファームHP

八頭町で好きな風景は「水路」

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今年の夏は長雨が続き、取材当日も雨模様でした。この特集は柿農家の仕事を体験させていただくものですが、柿農家の岡崎さんから「作業をしない日の方がゆっくり話せるので、取材は今日でもいいですよ」と言っていただき、取材させていただくこととなりました。

八頭町の柿畑の柿は、まだ緑色です。柿の収穫は、9月下旬から輝太郎がはじまります。それから、西条柿、富有柿、花御所柿などの柿が楽しめます。

■まだ緑色の花御所柿と西条柿

 

岡崎ファームは、国道29号線沿いにあります。この国道は、新因幡ライン ~ふるさとに出会う幸福(29)ロード~として日本風景街道に登録されており、秋の花御所柿の風景はまさに新因幡ライン を象徴するような風景です。

■12月頃に新因幡ラインから見える花御所柿の風景

八頭町で好きな風景は何ですか?と聞くと「水路」と岡崎さん。確かに八頭町は一級河川の八東川をはじめ、大江川や私都川など水流が豊富です。岡崎ファームにも水路が流れており、柿畑と風情がとても素敵で夕日の写る水路がとてもきれいだと言われていました。

■岡崎ファームの水路

「この風景を次世代にどう残すか?どう伝えたら、うるさく聞こえないか?をよく考えます。地元の人に興味を持って欲しい。八頭町の白兎伝説を引っ掛かりにしてもいいかもしれないですね。」

最近では、地元八頭町の方で定年を迎え柿農家に挑戦されたい方へアドバイスをすることもあるそうです。

「近所の方に知り合いに貸していた柿畑が返ってきて、柿の農作業について聞かれることがあります。その柿畑については、長い目を見たら植え替えた方がいいですと助言しました。今年植え替えるそうです。」

収穫できる柿の木を切ってしまうことに、どんなメリットがあるのか?お話を聞くと、背が高くなった柿の木から収穫することが手間でかつ危険なこと、柿の木同士の区間を開けることで生産効率を上げることができるなど、なんとなく見ていた柿の風景に奥深い知恵と計画があることに驚きました。そして柿農家を営む上での判断は、「どれぐらい先を見据えるか?」によって変わってくるとお話を聞くことができました。

 

「自分の果樹園は生産性を高めるために、柿の木の距離感を気を付けたり、手間を少なくするために灌水施設を整備しています。手作業の場合は、木と木の間が近いほうが作業がしやすいです。しかし車が入りづらいため、収穫したものを運び出すことが困難です。僕は広い土地にたくさんの柿の木を植えているので、それに適した設備や仕様にお金を使っています。将来の自分の柿畑を想像しながら、今後10年後から15年後にずっとおいしい柿をたくさん届けられるようにするには、どんなやり方が最適かを常に考えています。」

■車を使った収穫が想定されている柿畑には灌水施設も完備

※灌水施設(かんすいしせつ)…スプリンクラーや潅水チューブ等を用いて作物の水やりや施肥を自動的に行う設備のこと

おいしい柿を作って、届けるしかない

 

実は国ごとに国果というものがあり、日本の国果は「柿」であるということ最近知りました。逆に柿は、それぐらい身近で普段意識しない果物であるということかもしれません。柿という八頭町の特産物について、岡崎さんがどう思われているか伺いました。

「やはり柿は、庭先にあるような果物なので買ってまで食べない方が多いですよね。海外のきらびやかな果物に存在が押されてしまっている。それは、きっと本当においしい柿、大きくて甘い柿を食べたことがないからだと思います。家の近所の柿の木の味が、八頭町の柿の味ではありません。その価値を知ってもらうには、まず手に取って食べてもらうしかありませんよね。

そして、柿という果物が今よりも興味を持ってもらうために生産現場を知ってもらいファンを増やす必要があります。おいしい時期の柿を欲しい人に届けるしかないと思っています。」

柿農家の営みを知って欲しい

今回お話を聞いて、自分の判断すべてが収穫に通じるため数十年先の柿畑を想像しながら日々作業をされていること、その先を見据える力が八頭町の特産物である柿を作り、美しい景観を保っていることを知って驚くばかりでした。八頭町の農業従事者としてまだ年齢も低く同じ世代の農家も少ないことで「孤独を感じませんか?」と伺うと「いつも作業中に音楽を聴いてるから感じないね」と、岡崎さんは飾らない感じで答えてくれました。そして、スケートボードが好きで、小さな頃から友だちと楽しんでいたこと、スケートボードで繋がれた仲間やコミュニティが自分の世界を広くしてくれたことが、柿農家を今やっていることに役立っていることを教えていただきました。

 

八頭町の柿農家としての将来について、岡崎さんに語っていただきました。

 

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「柿農家の営みを地元の人に知って欲しいです。地元の人に知ってもらわないと後継者が出てこないから。だから、どんなふうに農家が暮らしているか知ってもらうことが大事です。そして、柿農家をやってみたいと思ったときに、誰にどうやってそれを伝えてもいいかわからないし、柿農家を営む方法を学ぶ方法もない。将来は僕の農園をモデル園にして、柿農家になりたい方が作業の仕方を学べる勉強会がしたい。この場所(岡崎ファーム)を新規農家が集える場所にするつもりです。次の世代に柿畑を花御所柿を残すために、できることをやっていきます。」

今回の取材では、柿とその柿が生み出される柿畑の風景に様々な計画や思い、知恵が盛り込まれていることを知ることができました。次回は、柿の色付く秋に八頭町の柿畑の風景と柿農家のお仕事について、お伝えさせていただきます。

つづく