第三回 柿の農繁期に聞く 柿畑を残すとは

鳥取県東部八頭郡八頭町は、柿の名産地です。

特に幻の甘柿といわれる花御所柿(はなごしょがき)の産地として知られています。

そしてこの柿畑の風景は、日本風景街道に「新因幡ライン」という名称で登録されています。

この特集では春夏秋冬の年4回に分けて、柿農家の仕事を体験させていただき八頭町にある柿畑の風景、

そして柿農家の思いについてお伝えします。

取材協力岡崎ファームHP

■前回までの記事

  

西条柿収穫のお手伝い

取材をさせていただいたのは、10月頃のことです。今回はじめに西条柿を収穫するお手伝いをさせていただきました。西条柿は、上品な口あたり、甘み、独特の風味が特徴の渋柿です。完全脱渋によって甘柿よりも一段と優れた甘さや緻密な肉質のハーモニーが楽しめます。また、干し柿に加工される柿もこの西条柿です。私はどの柿よりもこの柿が好物で、脱渋した柿(通称:あわせ柿)を秋にいただくことを毎年楽しみにしています。

■西条柿の収穫

  

  

西条柿を一心不乱に収穫していくと、柿を入れる籠がとても重くなります。毎日この作業を一定期間やるとなると大変だと感じました。私が収穫させていただいた西条柿は、干し柿用で枝を付けた状態で出荷されます。枝まで切り落とし収穫するため西条柿の果樹は傷んでしまいますが、今年いっぱいで切ってしまうものが大半なので問題ないそうです。高い所の柿は収穫しづらいんだな、ハシゴに登って収穫すると落ちそうになって怖いな、などと思いながらも折角お手伝いさせていただいているので少しでも戦力になりたいと思い作業をさせていただきました。

収穫をはじめてから一時間半後ぐらいで雨が降りはじめたので、作業場でインタビューすることになりました。「君が来るといつも雨になるわ!」と笑いながら、岡崎さんは大秋や輝太郎などいろいろな種類の柿をご馳走してくれました。振舞っていただいた柿を食べ比べると、それぞれ歯ごたえや甘さが違っていて面白く感じました。いろんな種類のおいしい秋の味覚を感じられる季節が来たということは、岡崎ファームもようやく収穫の時期を迎えたということ。「岡崎さんは収穫の喜びをどんなふうに感じているかを聞いてみたい」というのが、今回の取材テーマでした。

■いろいろな種類の柿をご馳走してもらう

  

「農繁期は収穫の喜びを感じますか?」という、私の問いに対して「収穫ができる喜びもありますが、今年を振り返ることが多いですね」と岡崎さん。私は、予想と違う返答に少し戸惑いました。

昔の柿農家はもっと試行錯誤と思う

  

「しっかり力を入れないと返ってくるものも少ない。設備投資や農作業に工夫をしてたくさん柿が収穫できるように考えて動いています。この収穫の季節になると一年間やってきたことを反省することが多いですね。昔の柿農家はもっと試行錯誤したんだろうなと思う。もっとこうしておけばよかったんじゃないかと。例えば春の霜対策はもっとできたなとかいろいろ考えます」

岡崎さんのおっしゃるようにエネルギーをつぎ込めばつぎ込むほどリターンは大きいですが、気候などに左右され予測できないことも起こりうります。先のことがわからないのは農作業だけでなくどんな仕事も一緒ですが、やはりお話を聞いていて農家さんのお仕事の大変さを感じました。

柿畑を残すために必要

今回収穫させていただいた西条柿の果樹は切ってしまうそうですが、私としてはまだまだたくさんの実りを付けるのにもったいないように感じました。そこで「今まで収穫をしてきた果樹を切るときにセンチメンタルな気分になりますか?」と岡崎さんに聞いてみました。

「なりますよ。でも、やっぱりこの柿畑を残していきたいから必要なことなんです。そのためには、良いものを作らないといけない。柿一つ一つにちゃんと価格がつかないと柿畑を維持することができないし風景も残すことができない。

先に繋げるためのバトンを自分が持っているような感じです。僕としては八頭町に生まれ育って柿農家の仕事や柿の収穫などしたことがない人が大半だと思うので、この地域に育った子どもたちには一度柿狩りをさせてあげたいです。そんなことまで考えると、自分だけじゃあもう手がいっぱいですね(笑)」

  

「柿農家にチャレンジしてみたい」と思う人をどうやったら増やせるんだろうか?そんなことを考えながら、柿農家のお仕事を手伝わせていただきました。「次の世代にバトンタッチをできるまで頑張れたらいい」と今回岡崎さんはお話されていましたが、次の世代に果樹園を渡すことができるのか柿畑の風景が続いていくか不安に感じました。

岡崎さんは八頭町の郡家地域の柿農家の親族として生まれたことが、柿農家をされていることのきっかけの一つになっていると思います。「柿に全く関与してこなかった人間が、どうやったら柿農家を志すようになるのか?」という質問をぶつけると「気合と挑戦する心でしょ」と、笑いながら答えてくれました。

 

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「柿農家を挑戦したいと感じた時に受け皿があること、例えば先輩農家や地域によるフォローがあることは大事かもしれません。貸してくれる果樹園が見つけれること、相談できる人や地域の応援や理解があることは、大事なんじゃないかな」と私の唐突な質問にも真摯に考えて答えていただきました。

今後の担い手創出や八頭町の柿畑の風景を残すためにどんなこと必要なのでしょうか?大変遅れてしまいましたが、ここまでを秋の特集とさせていただきます。次回【最終回】は岡崎さんにインタビュー形式でお話を伺おうと考えております。どうかお楽しみに!

つづく