第二回 鉄道と若桜鉄道の魅力を教えて下さい。

「若桜鉄道に乗車するために、八頭町を訪れる鉄道ファンの気持ちを知りたい」

そんな思いから、地元の鳥取大学鉄道研究会にインタビューを行いました。

そして地域住民には、日常になっている若桜鉄道や沿線の魅力について、お話を聞かせていただきました。

以下写真:八頭町、八頭町観光協会、鳥取大学鉄道研究会

若桜鉄道のような方針は、僕は好きです。

――皆さんにとって鉄道の魅力とは、どういったものなのでしょうか?

鉄道研究会Dさん(以降Dさん):鉄道の魅力は人。人の集まる場所、人が出ていく場所、いろんな人の思いが詰まった場所が鉄道だと思っています。駅や車両は、思いを込めて人が作ったものです。例えば、若桜鉄道をデザインされた水戸岡鋭治さんは、八頭町や若桜谷のことを思って、若桜鉄道の観光列車をデザインされたと思います。鉄道は、そういった人の思いが詰まった魅力があるものだと思います。

鉄道研究会Aさん(以降Aさん):そんなこと思ってたんですね(笑)

一同:(笑)

Dさん:人が好きなんです。国鉄若桜線沿線の人がなぜ鉄道ができて欲しかったか、そして鉄道ができたとき、どんなにうれしかったかを考えると楽しいです。

鉄道研究会Cさん(以降Cさん):この話の後に話しにくいですけど(笑)。でも、お話させていただくと、僕にとっての魅力は、「人を大量に乗せられる、そして速い」ことです。

――それでは新幹線などもお好きなんですか?

Cさん:そうですね。僕はどちらかというと、特急列車の方が好きです。

Dさん:他県を走る特急列車と鳥取を走る特急列車の違いは、ディーゼルエンジンを搭載しているため車両が重いことです。その分乗せられる人数が限られていて、「スーパーはくと」でしたら50~60人程度です。グリーン車でしたら座席の間隔が広くなるので変わってきます。またトイレや自動販売機の有無で、乗車できる人数も変わってきます。ディーゼルエンジンがない分、電車はもう少し多くの人を乗せることができます。

Aさん:僕たちも鳥取に来て電車じゃなくて、汽車っていうんだって初めて知りました。

鉄道研究会Bさん(以降Bさん):関西圏からの大学生が多いので、みんな大学一年生の頃は「電車」って言っちゃってます。これ電車じゃないんだよって、先輩に教えてもらってその時はじめて気づきます。

Cさん:関西圏だと列車っていう表現は、あんまりしないです。

Bさん:自分はローカル線が好きで、1両や2両の車両ってすごいなって思います。都会では10両、15両が当たり前なのに、鳥取を走る列車の数両に旅情を掻き立てられます!

Aさん:鳥取は汽車の車両も短いし風景も綺麗なので、どこを切り取っても絵になります。若桜鉄道もパッと写真を撮ったら絵になるところが、たくさんありますが都会だとそうはいかないです。都会では列車と風景を撮る際、どうしてもいらないものが多く写ってしまいます。

Cさん:でも人によっては、そのいらないものも含めた風景が好きという方がおられます。

沿線住民の協力なしに第三セクターやローカル線は生き残れない、必須なんです。

――それでは、若桜鉄道の魅力は何でしょうか?

Dさん:「人の魅力」「沿線住民の暖かさ」などです。各駅に駅の保存会というか、守る会、元気にする会がありますよね?その皆さんが、手を振ってくれる活動などを行っていることは、素晴らしいことだと思います。

Aさん:沿線住民の協力なしに第三セクターやローカル線は生き残れない、必須なんです。あるローカル線は、その存続のため発足された協議会の意識が低く、廃止になってしまいました。そして、その地域ではローカル線をもっとアピールして、観光振興をすればよかったのではないかと、大半の地域住民が廃止になった後に思っているようです。

廃線になってから、ローカル線があったことを利用して盛り上げようとされてはいるのですが、やはり無理があるようです。今はローカル線自体を復活させようという動きもあるようですが、難しいようです。

Dさん:あとは、駅舎、鉄橋などの施設です。若桜鉄道や若桜鉄道沿線には、鉄道遺産が多いですよね。因幡船岡駅や隼駅、第一八東川橋梁、第二八東川橋梁などの鉄橋、あとは若桜駅の転車台など、そういったものが鉄道遺産として登録有形文化財に登録されています。

Aさん:第三セクターやローカル線は、駅舎を維持するコストのかからないプレハブのような駅になることが良くあります。しかし、若桜鉄道は頑張って、駅舎を保存されています。こんなに駅舎がそのまま残っている鉄道はありません。

Dさん:一般的に古い駅は壊して、コンクリートの駅になっています。若桜鉄道は、田舎にあって駅舎が90年も経っているのに、よく残っているなと感心します。

Dさん:古い駅舎というのは、他の第三セクターだとなくなってしまうことが一般的なんです。メンテナンスが大変という理由からです。

また、若桜鉄道は車両も魅力的です。水戸岡鋭治さんデザインの車両が走っていることは、特徴的です。そして若桜駅にいろんな車両が置いてあることも面白いです。若桜鉄道C12形や12系客車、ディーゼル機関車、貨車もあります。八東駅や隼駅にも車両が保存されています。そういった様々な車両があることが魅力だと思います。

鳥取県では、主に海沿いを汽車が走っているんですが、隼駅に行ったらなぜか電気機関車が置いてあります。そして、若桜鉄道の沿線に行くと、気動車、ディーゼル機関車、蒸気機関車、電気機関車、客車、貨車など様々な車両を楽しむことができます。そのバリエーションの多さが、この20キロに満たない沿線に保存されているということはあまりないことです。

――隼駅には、ブルートレイン、八東駅にはワフが保存されています。でもそれを見て、鉄道ファンがどんな風に感じているのか聞いたことが無かったので、新鮮というかとても嬉しいです。

Aさん:八東駅の貨車の塗り替えは、僕らもお手伝いさせていただきました。

Dさん:若桜鉄道沿線SL保存会に入っていて、八東駅のワフの保存も関わっています。人手が足らないということで、お手伝いさせていただきました。ブレーキを解除して、手で押して、僕らで塗り替えしました。

――知らなかったです。皆さんが塗り替えてくれてたなんて!

Aさん:保存に積極的な鉄道会社なので、鉄道ファンとしては魅力的です。

第三セクターだと、存続のため効率化と伝統を残す方針の2つに分かれます。若桜鉄道のような後者の方針は、僕は好きです。

千葉県にある「いすみ鉄道」も古い車両を観光列車として使ってます。「北陸のえちごトキめき鉄道」も、JRから古い車両を買って観光振興に利用しています。鉄道会社の社長の思いで行っている事業です。若桜鉄道は、他にはない事業を行っています。よくこんな事業展開ができるなと感心させられます。

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